宵闇幻燈

PBW、シルバーレイン登録キャラ【永合周・柴】の日記です。 ゲームをご存じない方は意味が分からないと思いますのでご注意を。

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あかい めだまの さそり


 ポルックスとカストルって知ってるかい?
 ギリシャ神話に出てくる双子。

 神の血を引いたポルックスは不死身だったけれど
 人であったカストルが死んでしまったのを嘆いて自分の寿命を半分与えたんだって。
 そして共にあれるようにと神様にお願いして
 双子として天にあげられたんだよ。



 その日は、雨だった。
 両親の乗った車が事故にあい、二人が亡くなったと連絡を受けた時
 僕がまずした事は、嘆き悲しむことではなく
 祖父に電話をして会う約束をとりつける事だった。

 もちろん、姉をあの牢から出すためだ。


 *****

 子供の僕の目から見ても母は美しい人だった。
 温室の花のように大切に温度管理されて育てられた美しい二輪の花。
 それが母と伯母。
 母は双子の姉妹だった。
 外見こそ見間違うほどにそっくりだったが
 おとなしく控えめな母に比べて、伯母は情熱的な人だったように思う。

 父と姉妹もまた遠い血縁だ。
 格式だけが一人歩きする永合の家は未だその血に拘って近親婚を繰り返していた。
 小さな頃から決められた許婚。
 どうして父が母を選んだのか、その理由は聞いたことがない。
 傲慢な人だ。組み易し、と、おとなしい母を選んだとしても僕は驚かない。
 血で縛られた家で育った父が試みた唯一の反抗だったのだろうか。
 伯母の情熱に引き摺られたのだろうか。
 結婚した父が、伯母とも関係を持っていたのは周知の事実だった。

 母と伯母はどうしても相容れなかった。
 いつも比べられ、並べて育てられた花は
 競い合って、すくすくと美しく育つというものでもないらしい。
 お互いへの対抗心と虚栄心を肥料に二人の関係は少し、歪んで咲いた。
 母と、伯母はほぼ同時に身篭ったのだ。
 そんな時まで対抗しなくても良いのに、と少し可笑しくなる。 

 家内では周知とはいえ、外から見たら大変な醜聞だ。
 伯母の懐妊はひたかくしにされ
 生まれた子は離れに閉じ込められ、誰にも知られず育てられた。


 *****

 近寄ってはいけないよ、といわれた場所をこっそりと探検するのは子供の特権だ。
 そんな忌み閉じられた暗い部屋で僕が見つけたのは
 蒼い眼をもつ自分と良く似た少女。
 お互い、誰からの説明もなくとも双子なのだろうと思った。
 それくらいに子供の頃の僕らは瓜二つだった。

 僕はこっそりと自分のおやつを持っては姉のところに遊びに行った。
 不思議なことに同情心とかそういったものではなく
 純粋に自分に姉があったことが嬉しかった。
 姉自身が自分の境遇を憂いていなかったのもあったろう。
 憂うにも、彼女は何も知らないのだから仕方ない。

 表情の乏しい姉が本当に嬉しそうな顔をしたのはただ一度。
 いつもは両親にばれないよう夕方には本家に戻っていたが
 両親の留守に紛れて夜まで離れにいたことがあった。

 姉は壜に入った金平糖を見、

 「そっくりだな」

 小さな窓から夜空を指して笑った。
 姉はいつでもその小さな小さな窓から空ばかり見ていた。朝も夜も。 
 その時、僕は姉を其処から連れ出そうと思った。
 星はあんな小さな壜に詰まってなどいないからだ。

 *****


 この滑稽な戯曲の観客は、祖父と僕。 


 姉の処遇に意見できるのは元家長の祖父と、次期家長とされていた僕くらいだった。
 しかし、いつでも現家長である父と
 どうでもいい家名の見栄と外聞が邪魔をして年月だけが過ぎていった。
 そしてそれは雨の日。
 



 

 両親の死後、しばらくしたある日、伯母はいなくなった。
 本家の所有する古い館を借りて営んでいたアンティークショップもそのままに。
 自分の意思でなのか、違うのかは知らない。
 奔放な人だったので旅にでも出たのかもしれない。


 祖父は既に病に冒されていたが、
 全力を尽くし、僕と姉が同じ学校に通えるよう手筈を整えた。
 死の床で僕と姉を呼ぶと云い聞かせるように云った。

 
 「 お前たちはどちらも変わりなく 大切な私の孫だよ
   お前たちは、双子の姉弟なのだから。

   愛しているよ 」

    
 まるで自分にも言い聞かせるように双子なのだと何度も云った。
 祖父もまた、家に、血に縛られていたのだ。
 痩せた手で僕に握らせた懐中時計は、父が事故の直前まで愛用していたものだった。
 傷一つないその時計を見た時に気づいた。
 祖父が観客ではなく、舞台上におり、幕を降ろしたのだと。
 僕はその懺悔を受け取ると
 止まる事のない時計を、そっと、閉じた。

 *****
 

 僕は、卒業と同時に家名を継ぐ事になっている。
 それが姉が外に出る条件のひとつでもあったからだ。
 別に寿命を分け与えたポルックスのように純粋な気持ちからではない。
 けれど、穢れのない姉があの檻に戻るより
 僕の方があの家に良く似合う、そう思っただけ。

 それに、離れてもあの日の夜空を思い出せば寂しくない。
 僕たちはいつでもいつまでも共に空にあるのだから。

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